ここではバリュー投資では、割安度が高い銘柄は株価が上がりやすい傾向があることに加えて「利益の伸び」が重要であることを解説いたします。
目次
利益が伸びれば株価も上がりやすい割安株
「株価は1株当たり利益によって大きな影響を受ける」というのは常識ですが、1株当たりの利益が大きいほど、株式の価値が高いことになり、株価が高くなりやすいのです。
このことから考えると、利益が順調に伸びている企業は、株価も上昇傾向になりやすい、つまり、業績が好調な割安株の株価は上昇しやすいと言えるのです。
例えば、下記のように、利益が2倍になれば、株価も2倍近くに上昇する可能性があるのです。
逆に、利益が減る企業は、株価が下がりやすいくなります。特に、長期的に利益がじりじりと下がり続けている割安銘柄、数期連続して減益していると企業は、株価も低迷しやすいのです。
したがって、「PERが低いのに株価が上がらない割安株」は、利益が伸びていなかったり、減益が続いている企業が多いことになります。
いくらPERが低くても、業績が芳しくなく、先行きが不透明で利益が増えていく見通しが立たないような割安株には株価上昇を期待することができないことになります。
ですから、割安株投資(バリュー投資)を行う際はには、「PERが低くて、かつ利益が伸びそうである銘柄=現状で割安であり、今後株価の上昇に期待できる銘柄」を候補として選ぶことが重要かつ必須条件となります。
低PERで、高増益な割安株は株価の伸びが高い
過去の企業・株価データをものとに、PERの低さと、利益の伸びの組み合わせで、株価上昇にどの程度の差があるかを、つまり、低PER銘柄が増益を記録したときに株価がどの程度上昇するのかを見ていくと、増益率が高いほど株価上昇率が高くなっていることがわかります。
低PER割安株の平均株価上昇率の検証結果
下記は2016年3月末~2017月3月末の間で、東証一部の3月期決算企業の中で低PER銘柄が増益となると平均株価がどの位上昇したのかを、PER、増益率において各上位20%のグループから下位20%に分けて示しています。
増益率 | |||||||
上位20% | 上位20% ~40% |
上位40%~下位40% | 下位40% ~同20% |
下位20% | |||
低 P E R |
上位20% | 平均株価上昇率 | 108.55% | 105.15% | 66.45% | 44.18% | 30.05% |
銘柄数 | 26 | 21 | 37 | 49 | 55 | ||
上位20~40% | 平均株価上昇率 | 85.35% | 71.25% | 51.33% | 35.02% | 19.65% | |
銘柄数 | 15 | 47 | 42 | 43 | 39 | ||
上位40 ~下位40% |
平均株価上昇率 | 121.55% | 66.20% | 43.56% | 28.32% | 22.18% | |
銘柄数 | 24 | 41 | 51 | 37 | 33 | ||
下位40~20% | 平均株価上昇率 | 74.25% | 46.23% | 31.04% | 21.13% | 15.54% | |
銘柄数 | 35 | 42 | 39 | 37 | 29 | ||
下位20% | 平均株価上昇率 | 56.28% | 42.33% | 22.29% | 14.49% | 21.69% | |
銘柄数 | 85 | 34 | 15 | 20 | 26 |
PERが低いグループで増益率が高いほど平均株価常総率が極めて大きくなっています。下記は減益企業を省いており、下位のPERグループ/下位の増益率グループであっても株価は上昇していることがわかります。
したがって、割安株(バリュー株)を、以下のように捉えることができます。
PERができるだけ低いと同時に増益率も高い銘柄を、割安株投資(バリュー投資)の対象としてピックアップすれば、株価が大幅に上昇する確率が高くなる
後述する「業績予想の情報を得る」で詳しく解説しますが、低PER銘柄について、決算短信や四季報などで、今後の業績予想(予想EPS:予想1株利益)などをしっかりと確認しながら、将来株価上昇に期待できそうな割安株を発掘することになります。
しかし、収益面だけに注目しPERだけを判断材料とすればよいほど割安株投資(バリュー投資)は甘くありません。資産面での判断指標であるPBRや時としてはその他の経営分析指標や財務分析指標も考慮しなければバリュー投資で成功することはできないでしょう。
そのような分析を各銘柄で時間と労力を費やすのには、現実問題として個人では限界があるでしょう。そこで、当サイトでは、独自にスクリーニング条件を設定し、中長期保有を通して株価が上昇する可能性の高い銘柄をまとめて紹介しております。
予想EPSで高増益の割安株を探す
PERが低くて、増益率が高い割安株をピックアップすれば、株価が大幅に上昇する傾向があることを上記で確認しました。
ただ、割安株投資では、「今後の増益率をどうやって見つけるか」という課題を克服しなければ、将来、株価が上昇する割安株を抽出することはできません。
そこで、「確定した増益率」をベースに結果をまとめた上記表と同じように、将来性を分析するために「予想EPS」を利用します、予想EPSの確認方法は後述します。
予想増益率 | |||||||
上位20% | 上位20% ~40% |
上位40%~下位40% | 下位40% ~同20% |
下位20% | |||
低 P E R |
上位20% | 平均株価上昇率 | 64.02% | 26.14% | 81.45% | 28.02% | 41.26% |
銘柄数 | 33 | 29 | 20 | 36 | 38 | ||
上位20~40% | 平均株価上昇率 | 20.25% | 18.27% | 22.87% | 24.17% | 18.52% | |
銘柄数 | 27 | 23 | 17 | 35 | 56 | ||
上位40 ~下位40% |
平均株価上昇率 | 22.21% | 23.08% | 36.58% | 18.69% | 10.67% | |
銘柄数 | 37 | 30 | 18 | 44 | 31 | ||
下位40~20% | 平均株価上昇率 | 19.15% | 25.55% | 37.81% | 11.95% | 12.28% | |
銘柄数 | 37 | 32 | 40 | 33 | 22 | ||
下位20% | 平均株価上昇率 | 9.10% | 19.28% | 33.78% | 9.15% | 27.56% | |
銘柄数 | 25 | 44 | 73 | 10 | 9 |
この表で注目したいのが、PERが最も低い下位20%グループの平均株価上昇率が意外と良い傾向があることです。同じグループ内でも上位20%~40%までの範囲よりも、中間ぐらいの上位40%~下位40%の銘柄の方が良い結果となっています。
予想増益率が低い銘柄群は、予想外に利益が伸びて上方修正が行われると、そのことが大きな材料となって株価が大きく上がることがあります。特に、赤字予想だったの銘柄が黒字になると、意外性が強いので株価が上がりやすく、こうのような銘柄を割安株としてピックアップすることになります。
予想利益と株価上昇の関係で押さえべきポイントは、
- 予想利益が低い/赤字で公表されると → 株価が下がる
- 予想利益に反し実際の利益が高く公表される → すでに株価が下がっていただけに上昇幅が大きくなる
- 予想利利益が高く公表されている場合、予想を下回ってしまう可能性が高い
- 実績値が予想を下回り、下方修正されると、株価が下落することが多い
であり、予想増益率が高いからと言って、必ずしも株価が上昇しない傾向が出やすいと言えます。
下方修正されにくい割安株を選ぶ
上記でみてきたことは、「予想利益はあくまでも予想であり、実際には予想とおりの利益が出るとは限らないこと、企業によって、予想を控えめにするところもあれば、強気に発表するところもあります。
強気に発表して後で下方修正を行っている、特に、下方修正を繰り返しているような企業の株は割安株にはならないことが多いと言えます。
そして、業績予想が控えめな企業が割安株になりやすいことを以下で解説いたします。
過去の業績予想が控え目だった企業は今年も控え目な傾向がある
これまでに業績予想を控えめに発表する傾向があった企業は、今後も控えめに発表し続けて、下方修正することが少ないのではないかと考えることができます。このことを以下の方法で検証してみました。
- 東証1部の3月決算企業を対象に、2012年3月期~2016年3月期までの5年間の各決算で、当期純利益の予想と実績値を比較
- 5年間で実績が予想を上回った回数(0~5回)ごとに企業をグループに分け、2017年3月期決算で実績が予想を上回った企業の割合を調べた
2012年~2016年まで 実績が予想を上回った回数 |
2017年に実績値が 予想を上回った企業の数 |
2017年に実績値が 予想を上回った企業の数 |
2017年に実績値が 予想を上回った企業の割合 |
0 | 39 | 46 | 45.9% |
1 | 102 | 121 | 45.74% |
2 | 178 | 107 | 62.5% |
3 | 190 | 118 | 61.7% |
4 | 118 | 56 | 67.8% |
5 | 15 | 9 | 62.5% |
この表の結果でわかることは、過去5年間の各決算の実績が予想を上回っている回数が多いほど2017年で予想を上回った企業の割合が多くなっていことです。
このことは、過去において、業績予想を控えめに発表している企業ほど下方修正される可能性が低く、利益を上げやすく、投資家たちがプラスの印象を抱くことによって増益率以上に株価が上昇する可能性があると言えるのです。
低PER/高増益予想で業績予想が控えめな企業に投資する
上記でPERが低くて増益予想の企業が、実際に株価が上がるかどうかを検証しましたが、上記の結果を見た限りでは、増益予想の企業であっても、下方修正によって株価が大きく下がることもあるため、平均株価上昇率は思ったほど良くない傾向がありました。
そこで、ここはでは、もう一歩踏み込んで、業績予想が控えめな、上記の実績が予想を上回った回数が多い企業に限定して、低PER/高増益予想の銘柄の株価が上がりやすいかどうかを検証してみました。
検証条件・手順は以下のとおりです。
- 東証1部上場の3月末決算の企業を対象とした
- 2012年~2016年の5年間の内、当期純利益の実績値が予想値を上回った回数が3回以上の企業だけを対象とした(=業績予想が控えめな企業と仮定できる)
- 2017年3月期に増益かつ黒字の予想の企業のみを対象にした
- 2017年3月末の株価と、2017年3月期の予想EPSから、予想PERを求めた
- 2016年3月期の実績EPSと2017年3月期の予想EPSから増益率を求めた
- PERの低い順に、全銘柄を3グループに分けた(上位、中位、下位)
- 増益率の高い順に、全銘柄を3グループにに分けた(同上)
- 結果、9グループに分けたうえで
- グループ毎の平均株価上昇率を求めた
予想増益率 | |||||
上位3分の1 実績以上3回 |
中位3分の1 実績以上2回 |
下位3分の1 実績以上1回 |
|||
低 |
上位20% | 平均株価上昇率 | 55.73% | 42.25% | 48.55% |
銘柄数 | 10 | 14 | 23 | ||
上位20~40% | 平均株価上昇率 | 43.30% | 25.89% | 23.01% | |
銘柄数 | 17 | 17 | 13 | ||
上位40%~ 下位40% |
平均株価上昇率 | 39.24% | 33.45% | 20.59% | |
銘柄数 | 16 | 18 | 13 |
予想増益率を控えめに発表している企業ほど、どの低PERグループにおいても平均株価上昇率が高いことがわかります。この結果を見る限りでは、過去の傾向から業績予想が控えめな企業は、上方修正もされやすく株価が上昇する傾向があり、予想が控えめで低PERかつ高い増益予想の株が割安株として選んだ方がよいといえます。
上昇した割安株の例
上記の検証条件と同じで、過去5年間で業績予想を3回クリアしている「ハマキョウレックス(東証一部:9037)を上昇した例として紹介します。
割安株が大幅に株価上昇した例
同社の2016年3月時点の株価1,914円で、PERは7.42倍と低い部類でした。その後概ね業績は順調に推移し、2017年3月期に過去最高益をマークし、続く第一四半期も増益で推移し、同9月末株価が3,225円まで大幅に上昇しています、直近のPERもまだ市場平均を下回っていることから、第二四半期においても高増益となればさらに株価は上昇する可能性があると考えられます。
このように低PER銘柄が、過去実績が業績予想を上回ってきている場合、大幅に株価が上昇する傾向がある本当の割安株に投資できれば大きく儲けることが可能なのです。
株価推移 | 株価上昇率 | 実績PER | |
2016年3月末株価 | 1,914円 | 19.17% | 7.42倍 |
2017年3月末株価 | 2,281円 | 8.58倍 | |
2017年9月末株価 | 3,225円 | 68.49% | 10.7倍 |
まとめ
- 増収している企業の株価は上昇しやすい
- 低PER株で、高増益な割安株の株価は大幅上昇する傾向がある
- 増益率が高いほど株価もそれに合わせて上昇しすい
- 低PER株が高増益となると大幅に株価上昇しやすい
- 連続減益や下方修正が多い銘柄は割安株投資の対象にならない
- 業績予想が控えめで、過去数年間で実績が業績予想を上回っている企業は下方修正されにくい
- 赤字決算予想を発表していたが黒字決算となるような銘柄は大幅に株価が上がる傾向がある